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                     遠征を終わって


 岳人にとって憧憬の山であり、我が部にとっても10年来の悲願であったヒマラヤ。その憧憬の山の頂上にやっと足跡をしるすことができた。準備を開始してから二年間、初めての経験の為苦労を重ね、やっと準備が整ったと思えば今度はインド政府の事務の遅れから出発が遅れ、遠征そのものも危ぶまれたこと、その為隊員一人は参加ができなくなり隊長も頂上を目の前として帰らねばならなくなったこと、登頂した報告がいつまでも来ず、他の隊の遭難の報を耳にしては心配させられたことなど、苦労の多かった遠征ではあったが、今はそれも懐かしい思い出となった。一人の遭難者も出さず、残った三人全員が登頂でき、これ以上の成功はないであろう。
 この貴重な経験をする為に御尽力いただいた諸先輩方に感謝したい。
 また、近年部員は徐々に減少し、山岳部自体の存続さえ危ぶまれているが、せっかく得たこの貴重な経験を無にせず、近い将来再びあのヒマラヤの山の頂上に一歩をしるしたいものである。



                     インドヒマラヤ登山隊長  佐々木 雅 敏