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            マンダT峰登頂の壮挙をたたえる

 例年のことではあるが、年の暮れになるとその年に起こったいろいろな出来事の中から主なものを選び出し、ランクを付けて10大ニュースとして発表することが行われている。昨年末、たまたま民放のテレビで愛媛10大ニュースなるものが放映されるのを見たが、その中の何番目かに愛媛大学山岳会のインドヒマラヤ、マンダT峰の登頂が挙げられていた。
 このことは、今回の登山が単に愛媛大学関係者のみならず、広く県民から関心が寄せられた大きな出来事であったことを物語るものであり、改めて登頂の成功を喜び、かつ、誇らしく感じた次第であった。
 顧みると、私が学長に就任して間もない昨年4月のある日、愛媛大学インドヒマラヤ学術登山隊一行が出発の挨拶に見えられた。登山についてはほとんど知識を持だない私ではあったが、提示された計画書を拝見して、その隊員数の少なさと費用が少額であるのに一驚した。大勢の隊員と豊富な資金を動員して装備の限りを尽し、かつ、科学機器を駆使して未踏の山に挑んでいる近代登山隊に比べて、余りにも貧弱で心細い感がしたからである。私は計画の成功を祈るとともに慎重な行動を切に願って隊員を送り出したが、不安は念頭を離れなかった。
 加えるに、出発延期、計画変更も検討中との新聞記事を見て、ますます不安が募り、山岳会会長の五十嵐先生に学長室までお越し願って、情況についてお尋ねすると同時に、重ねて、慎重な判断に基づいて冷静な行動をするよう隊員に連絡方をお願いしたこともあった。
 このような不安と焦燥の中で、6月27日、待望の登頂成功の報に接した時には、心から快哉を叫ばずには居られなかった。少ない隊員、乏しい装備のなかでよく頑張ってくれたものである。出発延期による計画変更などの障害があったにもかかわらず、慎重な計画、冷静な判断、隊員相互の緊密な協力、不撓不屈の精神力など日頃の訓練の成果を遺憾なく発揮し、多くの困難を克服して、見事マンダT峰の登頂に成功し所期の目的を達成されたことは、誠に喜ばしい限りであり、愛媛大学の歴史に長く残さるべき快挙であると考える。
 この壮挙の達成は伝統ある愛媛大学山岳会の全員が一体となっての緻密な計画や不断の訓練の蓄積などの裏付けがあってこそもたらされたものであり、愛媛大学山岳会に深く敬意を表するとともに、このたびの登攀に参加された若い隊員諸君の御苦労に対し、心からねぎらいの言葉を送りたい。
 このたび、遠征報告書が刊行されるに当たり、重ねてマンダT峰の登頂をお祝い申し上げ、愛媛大学山岳会の今後ますますの御発展をお祈り申し上げる次第である。


                               愛媛大学長  坂 上 英