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                    巻頭言


 この度、愛媛大学山岳会がこの春実施したインド・ヒマラヤ遠征の報告書を作成するという。大変結構なことである。最初、会長の五十嵐先生からヒマラヤ遠征の計画をお聞きした時、果して実行できるのかと少々心配した。
 10数年前、本山岳会は五十嵐先生をリーダーとして、ニュージーランド、クック峰の遠征に成功しているが、今度は何といっても世界のヒマラヤであり、事故対策をどうすればよいかがまず気になった。幸い、私の友人であるインド学士院会員のライチャウドリー博士が、一切面倒をみてやるといってくれたので、それならとゴーサインを出した。
 登山許可はインド政府から取ってあったが、出国間際になって隊員のビザが取れないことを知った。早速、ライチャウドリー博士に電話して何とかしてくれ、御承知のとおり登山時期は何時でもよいというわけにはいかぬとたのんだ。しばらくして、ビザがとれたことを知り安心した。
 また、予定隊長の岡田恒則君は私の教え子であり、同君の結婚仲人も務めたのでよく知っており、長年の山岳体験を持つ彼がリーダーならと思ったが、彼は愛媛県教員であるから、教育委員会の出張許可を受けなければいけない。しかし、許可がえられずあちこちたのんでみたが結局駄目であった。隊長になった佐々木君はドクターでもあるし、経験も豊富なことを知り、彼ならやれると思った。
 数年以前、私は約1ヵ月間インドに滞在したが、お国の事情から判断して、山登りに必要なキャラバン隊の準備など短期間でできるものか心配であり、これもライチャウドリー博士に依頼した。佐々木君は先発隊としてニューデリー入りしたが、彼はすべての準備を終えたとライチャウドリー博士から電話をもらった。
 後はアタックの成功と全員の無事帰国を祈るのみであったが、ニューデリーから登山成功の連絡を受けた時は、本当にうれしかった。
 京都大学山岳会の活躍は有名であるが、本学も学生隊を海外に送るようになったことは、30年の伝統のしからしめるところと思う。会員諸氏のますますの御活躍と御精進を期待したい。
                                      (1982 ・ 12)


                         愛媛大学学生部長 浅 田 泰 次