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                     はじめに

 愛媛大学山岳会は今回インドヒマラヤに遠征を送りマンダT峰登頂に成功することが出来た。内外多数の御協力御援助に対し厚く御礼申しあげる次第である。
 かつてニュージーランド、クック山系に当会初の海外遠征を果九し、次の目標をヒマラヤに置いて以来まさに10年、機ようやく熟してかその実現を見たのである。
 元来ヒマラヤ登山にはモンスーンによる季節上の制約がある。加え、インド登山財団 ( I .M. F. ) による許可制になっている。アプローチの長さ、資料収集、情報入手の不便は別としても、時必の撰択は必ずしも自由ではない。そもそもこの計画会議の当初から推進役をつとめ参加を予定されたOBの不参加を余儀なくされ遺憾をきわめたのも彼此適切時期のそごに基因する。ビザが予定時期に至ってなお届かず、荏苒1ケ月出発が遅延したため各方面に御心配と迷惑をおかけしたについては、極力手を尽したに拘らず、理由さえ判然せずに終った。御海客を願う次第である。もっともこの季節はじめインド北部山岳地帯は異常豪雪とのニュースもあったので1ケ月の遅延は却って気象上我に幸いしたかとの慰めもないではない。
 近年登山熱は一段と高まり、海外遠征も甚だ多くなってその事故も前年(81年)殊に多くニュースとなった。海外旅行が比較的容易になった程には登山そのものが容易になる筈はない。登山も大衆娯楽化の傾向をたどるのは必然的と思われるが、一方において徒らに登山を危険視する風潮も少くはない。正統派を以て任ずる大学山岳部にとって中々に多難な時代ではある。
 然もあらばあれ、今回の遠征に、当初から計画準備万端直接煩瑣な事務を処理し、堅忍不抜一歳を傾投し尽した隊員のために先づは遠征の成功を喜びたい。
 この挙を踏えて更に第3次海外遠征の何れの日にか行われむことを刮目して待つものである。



                        愛媛大学山岳会々長 五十嵐 寧